ハムの見せてくれる夢

私の父親は農業を営んでおりましたが、その農場を継ぐということは一切考えておらず、私は幼い頃から、海外で働きたいという夢を抱いていました。20代の頃はその夢が叶い、10数年間、単身渡米していましたが、現地で出逢った妻と所帯を持つ事をきっかけに日本に帰国する事を決断しました。日本に帰国する事を決断し、それまで10数年間勤めていた会社を退職したこともあり、父親の後を継いで農家として新たに再出発したらどうかという話も上がりました。しかし、自分の店をもつ夢があった私は、日本料理の和食レストランの調理人として米国で修行を積んでいたこともあり、家業を継ぐことはありませんでした。米国において、日本人以外の人々が、どのような食生活を営み、どのような食事の味付けを好んでいるのかを学びました。米国での生活で一番衝撃的だったのは、お中元やお歳暮などで親戚から届くハム ギフトの詰め合わせで見るようなハムの数倍も巨大なハムがスーパーマーケットに陳列されて売られていたことでした。それをショッピングカートに詰め込んでいく米国人の身体も、驚くほどビッグサイズではありましたが、私はそこに感動しました。日本には、お中元やお歳暮などの贈り物の習慣がありますが、米国には、特に似たような習慣はなく、いつでも好きな時にそのビッグサイズのハムを手に入れることができるのだという事実は、農家に育ち、時期ごとにしか送られてこない大きなハムに心躍らせていた私にとって、それはそれは大きな喜びでありました。日本に帰って来てからは、なかなかそういったビッグサイズの喜びには出会えませんが、いつか自身の店でも取り扱いたいという新たな夢が出来た瞬間でもありました。